「新型コロナ対策から見えた、市民生活の安全保障と地方分権」

新型コロナ特措法は、緊急非常宣言は首相の権限で発令しますが、その後の外出自粛、休業要請などの具体的な行動に対する権限は都道府県知事に委ねられています。知事にもっと権限を与えるべき、という声や、私権に関する制限には慎重になるべきとの両方の声が聞こえていました。

神奈川ネットでは1998年市民生活の安全保障についてフォーラムを開催しています。すでに25年が経っていますが、神戸淡路大震災(1995年)の際、国は市民生活の安全を守ってくれない気づきがきっかけとなっています。国家レベルで軍事的な意味での安全、防衛とは違い、市民生活の様々な危険から自分・家族、そして地域から安全を守っていく視点の重要性を語っています。人々が自由と尊厳の中に生存し、貧困と絶望から免れて生きる権利が「人間の安全保障」として2012年に国連でも報告されています。
今回のコロナ感染拡大防止では、首都圏首長が連携して県域を越えないよう行動自粛要請がありました。それぞれの都県に特徴があり、横並びではなく、休業要請する業種、その協力金、そして子どもの学ぶ権利の保障など自治体がしっかり対策を講ずることが必要です。それは県内自治体を見ても同様です。3つの政令市がある特徴ある神奈川県ですが、県の姿勢を見て動く市町も多くありました。人口規模や財源などの差もありますが、それでも出来ることから動いた市町の姿勢は評価します。それでも、東京都との財政力の差や、県内自治体の差は明らかであり、権限と財源の分権議論を加速させていく必要も明らかになりました。1つのポストにマスク2枚が配られる愚策も、地方ごとにその財源を活用できたら、もっと有効な施策になったはずです。
神奈川ネットでは、憲法に緊急事態要項を追加させるような議論ではなく、個々を大切にする市民社会を強くする活動が一人ひとりの安全につながると考えます。長引いた自粛によっての子どもへの影響には子どもの声を聞き、高齢社会に突入しているなかで福祉の現場の声が必要です。市民の参加するソーシャルエッセンスの現場が社会を支えています。国の方向ばかりを見るのではなく、地方自治から市民生活の安全保障の充実を提案していきます。